2008年8月のプチ日記

8月29日(金曜) 夜

 さっきテレビを見てたら、自衛隊の飛行機のコックピットを取材したインタビュアーが一言。

 「すごい数の計器ですねえ…。これって、ひとつひとつに意味があるんですか!?」

 自衛官は素直に、「はい、あります」と答えておられましたけれど。

 一体どういう意図の質問だったんでしょうねえ。ほかにどんな答えがあるというのか。

 「このメーターとこのボタンは、意味ないです」なんて答えが返ってくるとでも思ったか。

−−−

 かくいうぼくも以前、近所のスーパーで学生時代の知人とバッタリ鉢合わせしたとき、莫迦っぽさ満点の会話を繰りひろげたことがあるんですが。

ぼく:「おっ、もしかして山本!?」
相手:「おー、名倉やんけ!!」
ぼく:「へえー、奇遇やなァ。…買いものしに来たん?」
相手:「そう、ちょっと食料品とか。ひょっとして名倉も買いもの?」
ぼく:「うんうん!」
相手:「ほんまに奇遇やなァー」

 スーパーの中で交わす会話としては、最低ランクに位置するものだと我ながら思います。

 とっさに何かしゃべろうとすると、おそろしく当たり前のことを言ってしまうから要注意ですな。

 

8月28日(木曜) 深夜

 メールを送信した後でミスに気づくことがある。

 送信する前にざっと読み返しているものの、急いでいたりするとつい見落としてしまうんである。これが友人宛てのどうでもいいメールなら全然構わないのだけれど、大事な取引先へのメールとかだと、かなり恥ずかしい思いをする。

 たとえばこんなやつ(実例)。

 文末をゴチャゴチャ変更しているうちに、うっかりそのまま送ってしまったのだ。

 おまけにコトバとして成り立ってしまっているから、ますますおかしな雰囲気になってしまっている。冒頭から丁重に書き連ねているにもかかわらず、いきなり「参加させていただきたいの」なんて切り出されたら、先方だって戸惑うだろう。

 普段はこんなオネエ言葉でメールしている奴なんだ…と勘違いされそうなのが何より不安な昨今です。

 

8月27日(水曜) 深夜

 どこのリンクから飛んだのか忘れたけれど、「モテるための極意」みたいなサイトにたどり着いた。

 こんなサイトを見ていること自体がかなり恥ずかしいのはさておき(それだけ切羽詰っているんだと思います)。

 書いてあるのはとくにどうということのない内容だった。要するに、モテるか否かは見た目で決まるのではなく、トークによって決まるのだと。で、そのトークの極意を書き記した本を、今ならスペシャル価格でお売りしますというわけである。

 で、かなり辟易しながらも、なんとなくページを読みすすめていたら、こんなプレゼント企画が現れた。

 人は見た目で決まるわけではなく、トークで決まるのだとさっきまで言ってたのに突然、「時計でセンスなどを、見極める人が多いんです」。まァ確かに、センスも大切なのは事実だろうから百歩譲るとしても、この時計はどうなのか? 果たして「女性の目をクギ付け」にするんだろうか。

 こんなのだったら何でもアリではないか。…と、試しに作ってみたのがコレ。

 

 ダサすぎて「女性の目をクギ付け」にする自信は多少ありますが。

 ちなみにこのTシャツ、快適な家着として重宝しているアイテムの一つ。ボロくて首周りがヨレヨレになってる位のがコンフォータブルなんですよねえ。

 

8月26日(火曜) 夜

 【本づくり日記02】

 先日ゲラが送られてきた、当サイト(というかプチ日記+もろもろ)の書籍化のお話ですが。

 出版社とみうらじゅんさんとの間の交渉は順調に進んでいたようで、先日、表紙用イラスト&デザインラフが届きました。やった! 

表紙用イラスト 表紙デザインのラフ

 描かれているのは小生です。恥ずかしさと嬉しさとがこんなに入り混じったのはいつ以来だろう。

 もちろん、直接みうらさんに会って描いてもらったわけではなくて。ぼくの写真を何点かお送りして、それをもとに描いていただいたんですが。

 気合入れまくって、いろいろ変なポーズとかキメまくって撮った写真をみうらさんに送ったところ、「雰囲気は分かりましたから、証明写真のようなカットで前後左右からお願いします」という旨のお返事をいただいてしまいました。浮かれるとロクなことがないのは、どこでも同じことですな。

 ちなみに、実際のイラストで使われているのは、京都・鴨川で証明写真っぽく写っている姿をもとに描いてもらったもの。

 あと、本のタイトルも決まりました。『ナグラる』です。…ええっと、念のために申し添えると、ぼくが考えて決めたわけではありませんので。

 タイトルについては、スタッフも交えていろいろ頭をひねったんですが、いいのが浮かばないまま時が経っておりまして。そんなとき、出版社の方が「これでどやっ!」とばかりに鶴の一声をかけてくださって、ようやく決定したという次第。なんだか本当にナグラってしまった感じです。

 表紙に負けないよう、精一杯がんばって校正してまいりますので(本文は提出済でもう変更不可)、どうぞよろしくお願いします!

 

8月25日(日曜) 深夜

 ちょっと前の「ためしてガッテン」(NHK総合)で紹介されていた「ムペンバ効果」というのが、ずっと気になっていた。

 沸騰している熱湯のほうが、常温の水よりも早く凍って氷になるというのだ。以下、番組の公式サイト(驚きの氷早作り技)から引用。

氷を作るとき、普通は、水とお湯では水のほうが早く凍ると思うことでしょう。しかし!約20℃以上の水ならば、なんと温度が高いほど早く凍るのです。

たとえば、マイナス20℃の環境で水をまくと、水のまま地表に水がまかれます。しかし沸騰したお湯をまくと、瞬間的に氷になってしまうため、地表はぬれません。

また、ある研究論文によると、70グラムの水で実験したところ、20℃の場合は凍り始めるまでに100分かかるのに対し、100℃の場合は30分で凍り始めたとされています(凍りきるまでには、もう少し時間がかかります)。

 こんなこと学校では習わなかったし、知識としても全く出会うことがなかった。これだけ身近で役立ちそうな雑学なのに、どうして広く知られてないままになっているんだろう? おまけに、このような反転現象が起こる機序は、科学的にまだ解明されていないというのもびっくりする。

 …というわけで、とりあえず自分でやってみようと思い立ち、実験してみた結果が次の通り。

製氷皿の左側に「常温の水」、右側に「熱湯」を注いで、30分間冷凍庫に入れたもの。 取り出してみたら、ご覧の通り、まったく差はありませんでした。

 ひょっとすると冷気の吹き出し口の位置なども影響しているのかとも考えて、その後も上下左右をいろいろ入れ替えて同じ実験をしてみたのだけれど、結果はほとんど一緒でした。結論は「水も熱湯も凍るまでの時間はほぼ同じ」。

 それ以外の要因も考え始めると、冷凍庫の設定温度だとか、冷気との接触面積だとか、製氷皿の熱伝導率だとか、水質だとか、いろいろあり得るとは思うけれど、ごく普通に家庭の冷凍庫でやってみて再現されないというのではダメだろう。NHKとしてはちょっと勇み足のような。

 まァでも、常温でも熱湯でも氷になるまでの時間が変わらなかった、というのが今回の発見といえますか。ションボリ。

 

8月22日(金曜) 夜

 金メダルを噛む選手をよく見かける。

 もちろん何らかのポーズだとは思うけれど(もともとは純金かどうかを確かめるような風習があったのかもしれない)、現在の金メダルが純金でないことは広く知られている通り。「銀製メダルの表面に6g以上の金を張りつけたもの」と規定されているそうだから、少々噛んだところで歯形は付かないはずである。

 剛の者自慢の選手たちのこと、己の力を鼓舞するため、金メダルをバリバリ喰ったらかっこいいのに。

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 さて昨日、Go smoking に連載しているコラムが更新されてます。

 今回のテーマは「新幹線N700系車両の喫煙ルーム」。 先日久しぶりに新幹線に乗ったら、全車両が禁煙になった代わりに、たいそうコンパクトな喫煙ルームが登場していて驚きました。まるでお茶室のようなコンパクトさ。

 よければご覧いただけると嬉しいです。

 

8月21日(木曜) 深夜

 半月ほど前、職場の先輩Iさんが食べ終わったメロンの種を社内の花壇にまいた。

 で、ひょっとして芽が出て成長してメロンの果実が成ったらいいなあ…と祈りながら毎日観察していたところ、一週間ほど経った頃、数個のタネが芽を出したらしい。当然のことながらすっかり大喜びしたIさんは、さっそく芽の付近に手書きのプレートを設置した。

 「これはメロンの芽を育てています。抜いたりしないでください!」

 するとその翌日、メロンの芽はひとつ残らず消え去っていたのだという。

 突然の喪失体験がよほどのショックだったのか、この一件以来Iさんはすっかり元気をなくしてしまった。そうかと思えば、ぼくらが全然関係のないメロンパンの話をしていたらIさんが飛んできて、「え、メロンの芽が見つかったって!?」などと訊ねてきたり。

 確かにIさんはかわいそうだし、芽を盗み去った(?)心ない犯人には怒りを覚えるのだけれど。

 ただ、Iさんが書いたプレートにも問題があったのではないか。「これはメロンの芽です」などと書かれたら、つい失敬したくなるのではないか?

 今後また同じように種をまくことがあれば、次のようなプレートを並べて設置すべきだろう。

 「これは単なる雑草です」
 「決してメロンの種ではありませんから、盗んでも仕方ないです」
 「ただし防犯カメラを設置しています」

 単なる雑草であることがハッキリ示されているうえ、防犯カメラが仕掛けられているとなれば、誰も盗ろうとなんて思わないはず…ですよね?

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【本づくり日記01】

 まだ出来てもいないのに公開するのはかなりカッコワルイんですが、嬉しいので書いてしまいます。

 ぼくの書いた文章が近々、書籍として出版される予定となりました。詳しい時期は未定ですが、10月までに刊行を目標にがんばっております。

 プチ日記からのセレクトに加えて、長めの書き下ろし数本と、外部サイトに連載した文章から数本という構成になる予定(版元は小さな出版社さんです)。

 …というわけで少し前から打ち合わせなど繰り返していて、先日ゲラが送られてきた次第でありまして。

打ち合わせ光景 企画案 (念願のみうらじゅんさんに
表紙イラスト描いてもらえるかも!)
校正前のゲラ

 まだ刊行まで日があるので、本になっていく過程を順次アップしていく予定です。…これで企画がポシャッたら笑ってやってください。

 

8月20日(水曜) 深夜

 ナイロンやビニール、アクリルなどの化学製品は、すべて石油からできている(プラスチックなどは近年、植物由来のものもあるようだけれど)。

 だから自然界には存在しない人工的な産物の代表みたいな扱いをされているけれど、考えてみれば石油だって、元をたどれば自然界が長年かけて育んだ産物なのだ。

 ジュラ期あたりの大昔に、植物や動物の遺骸が湖の底なんかに蓄積して、それが高温と高圧の条件下で100万年以上かけて「熟成」された結果、原油になったというのが現在有力な説 である。

 ってことは、我々が現在使っているナイロンもビニールもアクリルも、すべては大昔のシダ植物とか恐竜とかに由来しているのだ。

 ノートパソコンも携帯電話もデジカメも、もとを正せば植物&恐竜。いまの科学力では人工的に石油を作ることなど到底できないから、現在のハイテク製品の全ては、結局のところ植物とか恐竜とかの死骸に全面依存しているわけである。

 人工的に化石燃料を作るのがこの先もずっと不可能だとしたら、いま地球上で最もよく繁栄している人類がどんどん火葬されて、ちっとも石油作りに貢献していないというのは、数百万年後の人たちにとっては相当ガッカリなことなんじゃなかろうか。石油を使うばかりで、全然作ってない。

 だからといって湖の底に沈められたいわけではないけれど、携帯電話を手にしてふと、死んだ恐竜がこうなったか…と柄にもなく感慨深くなった本日。

 

8月19日(火曜) 深夜

 愛媛県の実家に帰省していた同僚から、おみやげに地酒の日本酒を頂戴した。

 濃厚なのにクリアな風味で、お味のほうは「さすが手造り!」と文句なしに旨かったんですが、気になったのがそのラベル。

 当初「手造り」と印刷されていたのが、修正液で消されて「手造」に変えられているのだ。なんですかこれは!?

 正に「手作り感」あふれる趣ではあるけれど、こんなすぐ分かる小細工がなぜ施されたのかサッパリ分からない。おそらく酒蔵の店主の「こだわり」だとは思うのだけれど、それにしてはまた謎が…。ラベルの左側には、こんな記述が堂々と鎮座しているんである。

 油断しているときに突然ワケが分からないものに遭遇すると、ほんとに動揺してしまいますねえ。

 気になって気になって、後味が猛烈にすっきりしないまま現在に至っております。

−−−

 この地酒をくれた同僚本人に上述の件を報告したところ、なぜか「すみません!」と何度も謝罪されました。

 ワケが分からないことは続くもんですな。

 

8月16日(土曜) 夜

 いまや東大教授をしておられる上野千鶴子女史が以前、こんなことを書いておられた(引用にあらず。語尾などはテキトーです)。

 「男の人のペニスって、いつも勃ってるんだとずっと勘違いしてた。なぜって、いつ見ても私の前では勃ってたから」

 ああ、なんてカッコイイんだ! こんなセリフ、一度でいいから口にしてみたい!!

 ただ、ぼくは残念ながら男性である。上野女史と同じセリフを決めたところで、ちっともカッコヨクない。「ペニスっていつも勃ってるもんだと思ってた。みんなそうじゃないんだ!」…これじゃあまるで変態である。というか、なにか器質的な病気ではないかと心配されるのがオチだろう。

 この場合、言葉の意味として、「自分の前では異性が性的に興奮するのが当たり前だったから、それが性的興奮状態であることに気付かなかった」という風にならなくてはいけない。そして、こういう意味のセリフをサラッと口にしてこそ、ものすごいカッコよさが醸し出されるのだ。

 そこでためしに、いくつか考えてみたわけですが…

 ううーむ、なんだか単なる虚言癖患者である。もっとシブいセリフをさらっと言えるよう、日頃からちゃんと考えておくことにしよう。

 

8月14日(木曜) 深夜

 一年ちょっと前に購入したステンレス鍋が壊れてしまった。

 上蓋の取っ手部分が「もげて」しまったんである(下図参照。わざわざ図を作るほどのものか我ながら疑問ではありますが)。

 かなり気に入っていたので、週に2回は使うハードユースだったのだが、それだけにショックは大きい。

 おまけにこの鍋、3万円くらいした有名メーカー(ビタクラフト)のやつで、鍋内部を真空状態にするために取っ手部分が特殊な構造になっている。つまり、取っ手が壊れてしまっては 「単なる鍋」になってしまうのだ。

 しかし、さすが有名メーカーだけあって、製品本体(パーツ除く)には10年間保証が付いている。万一壊れても、購入後10年間は無料保証してくれるらしい。

 そこで即刻、購入した店に持参して修理をお願いしてみたわけですが。

ぼく:「これ…壊れちゃったんですけど、10年以内なら無料保証していただけるんですよね」
店員:「えーと、取っ手ですか。あのですね、取っ手などのパーツは保証外になるんですよ」
ぼく:「パーツっつっても、上蓋ごともげたんですよ。これって保証対象になるんじゃないですか?」
店員:「申し訳ございませんが、取っ手はパーツになりますので、有料での交換になります」
 

 ちょっと待った! パーツとしての取っ手自体は無傷で、取っ手と上蓋とをジョイントしている溶接部分が破損しているんである。なのに有料での交換と言われても納得がいかない。それとも、パーツを交換したら問題が解決するとでも言うのか? ああ上等だ、やれるもんならやってくださいませ!!

ぼく:「ってことは、パーツである取っ手を有料で交換したら直るんですか?」
店員:「はい、交換でご了承いただけるのであれば、この場で修理させていただきます」
ぼく:「ちなみに、それっておいくらするんでしょう?」
店員:「1500円になります」
ぼく:「じゃあ、お願いします」

 さっそく新しい取っ手を取ってきた店員は、袋を開封して、ぼくが持ち込んだ上蓋にジョイントしようとする。…が、当然のことながらジョイントできない。当たり前である。溶接ごともげてるんだから。

 それでも不毛な修理に悪戦苦闘すること約5分、とうとう音を上げた店員が話しかけてきた。

店員:「申し訳ございませんが、取っ手の下の溶接部分からとれてるようですので、本社工場に送っての修理ということになります」
ぼく:「だったらやはり、パーツじゃなくて上蓋の破損ってことになりますよね?」
店員:「いや、それは…。あくまで取っ手の破損ですので…」
ぼく:「パーツとして売られている取っ手には、溶接部分なんて付いてませんよね? だったら、パーツではなく上蓋ってことになりませんか?」
店員:「そう言われましても、取っ手がとれたとなるとパーツ扱いになるわけで…」
ぼく:「取っ手がとれたんじゃなくて、上蓋が剥がれたんじゃあないですか??」
店員:「確かに上蓋の破損であれば保証範囲内ですが、今回の破損が取っ手なのか上蓋なのかとなると、非常に微妙なところでして……」
ぼく:「ええとですね、繰り返しになりますけど、パーツ売りされている取っ手部分が、取っ手の範囲だと考えるのが妥当なんじゃないですか!?」
店員:「それは結局、解釈上の問題になってくるわけで…。本社工場に問い合わせますので、改めてお返事差し上げます!」

 取っ手に属するのか、上蓋に属するのか? …こんなことで「解釈上の問題」とかなんとか真顔で押し問答してる自分が心底間抜けに思えてきて、とりあえずは「本社の返答待ち」ということで了承したんではありますが。

 瑣末なことに損得そっちのけで裁判に突入してしまう人たちの気持ちが、ちょっとだけ分かるような気がしました。

 こうなったら、お互い弁護士つけて「取っ手か蓋か?訴訟」に持ち込みますか。しませんけど。

−−−

 今回の件、もしもぼくが販売店の店員だったら。

 客の訴えに対して、「そうですよねえ。これはどう考えても、無料保証の範囲ですよねー」てな風に返しますね。「最終的には本社工場の判断になるんですけど、無料保証になるよう、なんとか交渉します」とか調子のいいこと言って。

 で、テキトーに修理に回して、有料になるとの回答だったら「精一杯交渉したんですけど、本社工場のほうが頑な態度でして…」と。これで客の気が済んでくれたら御の字だし、気が済まないようならあとは本社と直接交渉しておくれ、というわけ。

 自分の責任外のことにいくら真剣になっても、お互い気分悪くなるだけですからねえ。

 こう考えると上述の店員、とても勤勉で誠実なのかもしれませんな。

 

8月13日(水曜) 深夜

 子どもの頃、食卓にデザートが出ると、妹と本気で争奪戦を繰り広げていた。

 たとえばイチゴがたくさん盛られてきたとする。

 当然のことながら、大粒で美味しそうなやつと、小粒で不味そうなやつとがある。ただ、ここで大粒のやつを片っ端から食べていけばいいかというと、事態はそう単純ではない。なんとなれば、「本当に美味しいものは最後にとっておきたいから」である。

 だってそうだろう。もしあなたが10粒ほどのイチゴを目の前にしたとき、まず美味しそうなやつばかり食べ尽くすだろうか? いやまァ、中にはこういう人もいるだろうけれど、多くの人は緩急とりまぜながら、最後は大粒のイチゴで有終のクライマックスを奏でるのではないか。

 しかし子どもの頃、目の前にはイチゴだけではなく、妹というライバルがいた。大粒のイチゴを最後に食べようとして、いくら自分の陣地に引き寄せてキープしたところで、ヒョイと手を伸ばした妹に奪われるのがオチである。かといって、お互いに先を争って大粒イチゴばかり食べたら、後に残るのは貧相なイチゴだけになってしまう。

 そこでぼくがとった戦略は、次のようなものだった。

 で、これは我ながらナイスな戦略だと、すこぶる機嫌よくデザート・ライフを満喫しておったわけですが。

 しばらく経ったある日、突然かつ苛烈な形で妹の逆襲が牙を剥いた。いつもように食卓に出されたイチゴの皿に向かって、あろうことか、妹はいきなり直接ツバを吐きかけたんである。うわーっ! こんなことされたら、ぜんぶ妹のもんやんけ!!

 あまりに非道な妹の逆襲に激昂したぼくは、思わず同じ行為をとってしまった。咄嗟にペペーッとツバを吐きかけたんである。

 妹とぼくの前には、両者のツバがたっぷり付着したイチゴの山。もはやどちらにも手を出せない。

 …そして翌日、和平交渉が開催されたのでした。おやつにイチゴが出された場合、まず平等となるよう分配してから食べるようにしよう、と。

 いま思えば、当時のヨダレは核兵器の抑止力のようなものだった。逆に言えば、核兵器は子どものヨダレみたいなものということになりますか。

 

8月12日(火曜) 深夜

 少し前に勢いづいて購入したワイヤレスマウスでありますが。

 使っているうちに、マウスを動かしてもカーソルが反応しないときがちょくちょくあることに気がついた。とくに小さいターゲット(ウィンドウのクローズボタンなど)をクリックしようとして予測どおりに動かないと、操作している流れが妨げられて異常にイライラする。

 イライラすると交感神経が興奮し、心拍増大、血圧上昇、コルチゾール分泌といった反応が生じて寿命が縮まる。ワイヤレスマウスごときに寿命を削られてはたまったもんじゃないから、早急になんらかの手を打たなければならない。

 といって新しいマウスに買い換えるのも口惜しいので、とりあえずは自分の気持ちの持ちようを変えてみることにした。気持ちの持ちようはいくら変えてもタダだから安上がりでいい。

 …そんなわけで、パソコンに向かいながら一日に何十回とゲーム開始&終了を繰り返している昨今であります。まったく忙しいったらありゃしないが、これで本当に精神状態がよくなるのだから、莫迦でよかったねと自分を褒めている次第。

 常に絶対勝つゲームが好きなことにも気付きました。我ながら可哀想すぎて言葉もありません。

 

8月11日(月曜) 深夜

 近所のレンタル屋の洋物エロチカコーナーをぶらついていたら、いろいろと楽しいタイトルを発見したので。

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見つけた洋画エロチカDVD
 
もとネタ(邦画バージョン) オリジナルのエロチカDVD もとネタ(洋画バージョン) その他
 
もとネタ(アイズ・ワイド・シャット)の機微が全くなくなっている潔さ!
 
キューブリックも自分の作品がAVになるとは思ってなかったろう。 「〜ワイド・シャット」は踏襲されているけれど、ほとんど意味不明。 こう見ると雰囲気は、オリジナルのエロチカDVDに似てますな。  
 
「デスマラート」なんていう英語はありませんので、念のため。
 
一昔前のロックキッズなら「デフレパードの妻たち」と読み違えるね。 当然ながら、「デスマラート」なんていうタイトルではありません。 邦画版AVのほうがパッケージは頑張ってますねえ。  
「アメリカ」を「ハメリカ」にするという涙ぐましさ。でもエロさ皆無!!
 
原題は"Apocalypse now!"(黙示録を今!)。戦争礼賛!映画。 エロチカDVDのオリジナルを調べてみたら、"Kelly's Heroes"でした。 この作品の邦題は『戦略大作戦』。エロ翻訳しにくかったんでしょうな。 参考までに『戦略大作戦』日本版。
 
「ヌード・オブ・ザ・リング」はいいとしても「マラの仲間」はどうなのか。
 
こうして見ると、マラの仲間に思えてくるから不思議です。 原題は!"Whore"(売春婦)だったんですねえ。 作品を見たことがないので、とくに言うこともありません。  
 
なんと芸のない邦題! もうちょっと頭をひねってほしい!!
 
人類を支配する「猿」は、黒人のメタファーとして見るほうがいいようで。 メタファーもくそもございません。 原作の「猿」は日本人がモデルだったそうですよ。  
 
"IN"を「淫」にしているところが、高校生的センスの素晴らしさ! テレビで放映されてたとき、なんとなく観てしまって時間損した気分に。 邦画版より、こっちのほうがカッコイイ! 知り合いになりたい!! 関係ないですが、今日の夕食はアスパラガスとキノコの炒め物でした。  

 

8月9日(土曜) 深夜

 同僚Aさん(30代女性)が先日、何週間もセキが続いて体調もすぐれないというので内科を受診したらしい。

 いろんな検査をした結果、血液検査などは全て正常だったものの、ひとつだけ「原因不明の異常所見」が見つかった。MRI(全身の断層写真)の画層において、胸部の皮下に「指先くらいの影」が写っていたのだ。

 で、そこの内科医いわく、「一見すると脂肪組織のようだけれど、周囲の組織とは明らかに異なっているし、もしかしたら悪性の腫瘍かもしれない」「ウチではよく分からないから、このMRI画像を持って胸部疾患の専門医のところに行ってほしい」と。

 そして昨日、Aさんは専門医を受診したのだった。仕事帰りに受診する都合上、自身のMRI画像を職場に持参していたAさんは、受診前にその画像をぼくらに見せてくれた。シロウトなので詳しくは分からないながら、そこには確かに空豆くらいの大きさの「影」がクッキリと写っていた。

 「うわー、けっこう大きいですね…」
 「ほんとだ、空豆みたい…」

 受診を控えてナーバスになっているAさんを尻目に、つい正直な感想を漏らしてしまったぼく達。

 しかし翌日、出勤してきたAさんに専門医の診断結果を聞いて、虚脱してしまった。

 「原因不明の異常所見」の原因は「乳首」だったのだ。診断名"nipple"。そうとは知らず「大きいですね」とか「空豆みたい」とか言っていたぼく達も相当失敬であるが、内科の医者も医者である。なんで乳首が分からんのだ ? 女性はウンコしないどころか、女性には乳首なんてあるはずない! くらいに純情なドクターだったのか!?

 ま、はるばる遠くまで専門医を訪ねたAさんは「ガンじゃなく乳首でよかった…」と嬉しそうだったので、結果オーライといたしましょう。

 

8月7日(木曜) 深夜

 一週間ほど前、同僚Mさんの机の上にウイスキーのベビーボトルが出現した。

 それを見たぼくらは、陰でいろいろ噂しはじめた。

 「ひょっとして…仕事中に隠れて飲んでるんですかね?」
 「そりゃあさすがにマズいだろ」
 「まさか本当にそんなことしないでしょう」
 「うん、Mさん真面目だし」

 しかも、しばらくボトルを観察してみたところ、毎日少しずつ量が減っていることが判明した。

 「やっぱり飲んでたんですよーっ!」
 「真面目な人だけにストレス抱え込んでたのかもねえ」
 「でも…中身はウイスキーじゃないのかも」
 「そうだよ、漢方薬とかってこともありそうだし」

 早速ボトルを開けてみたら、ぷーんとアルコールの匂いが漂ってきた。

 「うわー、ちょっとヤバいことになってきたなあ」
 「どうする!? 上司に見つかったらタダじゃすまないと思うよ」
 「とりあえず本人に聞いてみようよ」
 「うん、そうしよう」

 で、Mさんが外回りから帰ってきたのを見計らって、隣席の者がついに切り出したのだった。

 「あの…コレなんですけど、なんで机の上に置いてあるんっすか?」
 「ああコレ? 最近喉の調子が悪いもんで、うがい薬入れてるん」
 「でもなんか、アルコールの匂いしましたけど…」
 「うん、消毒用アルコールも入ってるねん」

この時点で、ぼくら一同はかなりホッとしたのだが、今後のために言い添えておくことにした。

 「Mさん、てっきりウイスキーかと思ってビックリしましたよー」
 「アハハ、まさかそんなわけないでしょ!」
 「でも液体の色も茶色いし、アルコール臭もするし、誤解されかねませんよ」
 「そうそう、ウイスキーのボトルに入れるのは止めたほうが……」

 するとMさんいわく、

 「確かにそうかもね。じゃあ引き出しの中に隠しとくわ」

 これで上司にバレたら、何を言ってもアウトだと思うんですが、なんとなくそのまま現在に至っております。もう知ーらないっと。

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 さて本日、Go smoking に連載しているコラムが更新されてます。

 今回のテーマは「嫌煙とうつ病と欲求階層説」。近年のうつ病の動向など交えながらマジメなことを長々と書いてます。

 嫌煙云々については無理やりこじつけてる感満点ですが、よければご覧いただけると嬉しいです。

 

8月6日(水曜) 深夜

 あまりに唖然として写真を撮るのを忘れたんですが。

 京都市内の某天満宮で見かけた絵馬に、こんな願掛けが書いてあった。

 「俊樹(仮名)が自分の意思を持って一念発起し、京都大学法学部に合格して法曹界に進んでくれますように」

 おそらく親の手によってこっそり書かれた文面なのだろうが、あまりの身勝手さに、おもわず噴き出しそうになってしまった。

 なにしろ、自分の意志を持って一念発起してほしいと願っているにもかかわらず、その舌の根も乾かぬうちに、本人の進路を親が決めてしまっているのだ。それも、京大法学部に入って法曹界に進んでほしいという細かさ。

 本人の意志を大切にするなら、高校中退しようがヘビーメタルの世界に飛び込もうがそれを尊重すべきである。いいやそんなことはない、子どもの進路なんぞは親の一存で決めていいのだ! という硬派な親御さんがいたって一向に構わないと思うが、それならそれで、「親の命令を素直に聞く子でありますように」と願掛けすべきだろう。

 「私自身は子どもの自主性を尊重する『いい親』でありたいけれど、子どもには私の思い通りの道を歩ませたい」という歪んだ矛盾が、このような絵馬を生むバックボーンになっているものと思われるが、こういう矛盾をなんの臆面なく書いてしまっているのがなんとも可笑しい。

 ぼくも今後は、職場の後輩たちに言っていくことにしよう。

 「もっと先輩にヘイコラしたいって、自分の意志で思うようになれ!」

 

8月5日(火曜) 深夜

 社員食堂で同僚たち数人とランチを囲んでいたとき、北京オリンピックの話題になった。

「そういえば…オリンピックっていつからでしたっけ?」
「ええっと確か、もうすぐだよね」
「今週か来週か、そのあたりだった気がする」
「みんな、ちょっと知らなさすぎやで!」
「そういう名倉さんは知ってるん?」
「いや…うん、知ってたけど忘れた」
「また見栄張って!」
「いや、ホンマやって。何日か前のニュースで5日後って言うてたもん」
「…ってことは、あと数日ってことになりますよね」
「うん、おそらく今週中に始まる可能性が高いね」
「お、真実に近づいてきたやん! ぼくの情報のおかげや」
「でも、何日に始まるか確定できひんよねえ」
「もどかしいけど、今週中に始まる可能性が高いって判ったんやから」
「なんか…さァ、こういう議論って、すごいバカっぽいよね」

 ブレーンストーミングの限界を感じた本日でした。みんな最大限の知恵を出し合ったんだけどなあ。

 

8月4日(月曜) 深夜

 無糖炭酸飲料の「ヌューダ」が滅法気に入っている。

 いつも数本は冷蔵庫に入れているうえ、念のため、さらに数本を部屋に備蓄している。

 普通の炭酸水と違ってほんのりタイトな風味がついているから、そのまま飲んでも美味しいし、糖分が入っていないから、歯みがきした後でも飲めるのがまた嬉しい。酒を割るにもピッタリで、焼酎(甲類)やウイスキーがあつらえ向きである。とくに安ウイスキーをヌューダで割ってレモンを添えたものは最高で、それこそいくら酒があっても足りないというか、いくら身体があっても足りないというか。

 最近においては、毎日1本は飲まないと気がすまないライフスタイルがすっかり定着してしまった。これはこれで大いに構わないのだけれど、問題はウチの近所で売っている店がひとつしかないということ。この店で売り切れだと、もうどうしようもないんである。

 この調子でいくと、もしヌューダが販売終了になったりしたら、大変なことになってしまう気がする。それこそ、長年連れ添ったワイフが突然他界したかのような、壮絶な喪失感に襲われるんではないだろうか(…とか、結婚したこともないくせに書いてますが。というか、なんでワイフと書いたのか既に自分でも分かりませんが)。

 あまりメジャーではないものを好きになると、これだから困る。

 販売終了になったら困るので、皆様もよければ買ってあげてくださいませ。スポンサーもついてないのに、自分のために宣伝。

 

8月2日(土曜) 深夜

 いよいよ盆踊りのシーズン到来!

 で、本日の盆踊りであります。

 自衛隊の宇治駐屯地では毎年、こうやって納涼盆踊りが開催されている。

 我々国民の安全を守ってくれている自衛隊だけに、盆踊りのときもきっと、自動小銃片手に一糸乱れず、花笠音頭などのオペレーションをこなしておられるのだろう。本当にごくろうさまである。

 世界各国の軍隊も、やはり盆踊りは実施しているのだろうか。

 もしやっていたとしてもトップクラスの国家機密で、我々にはとうてい窺い知れないことだろうけど。

−−−

 …と書いてるうちに、自衛隊の盆踊りの写真って、何年か前の日記にも紹介した気がしてきました。

 でも、盆踊りだって毎年同じようなことやってるんだから、まあいいや。

 

8月1日(金曜) 深夜

 先日、飲み会の席でアロマセラピーの話になった。

 で、アロマには良眠やイライラ解消などの効用があるとして以前からブームになっているらしいこと、アロマセラピー関連の資格もいくつかあることなどが話題にあがり、せっかくだからぼくも会話に参加しようと思って、乏しい知識を総動員して発言してみた。

 「アロマの資格ってどれも通信教育だし、バカでも取れちゃうみたいですよね」
 「資格取ったところで就職口なんてほとんどないらしいし、何のために取るのかよく分かんない」

 するとシーンと場が静まり返った。しばらくの静寂ののち、その場にいたHさんが口を開いた。

 「あの…私、アロマセラピストの資格取ったんですけど」

 あわてて「それはすごい!」「バカでも取れるとか言いましたけど、もちろん賢い人にも取れるわけですし!」などとお世辞を並べるも、時すでに遅く。なんとも気まずい空気がおいでなさり、飲み会はそのままお開きになってしまったのでありました。

 我が身を振り返ると、こういう失言ばかりやっている気がする。飲み会ターミネーター。

 


2008年7月のプチ日記 

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